2008年にNHKで放送されたドラマ「監査法人」というのをご存知でしょうか。

主演の塚本高史と松下奈緒が演じる、唯一まともに監査法人と会計士の仕事を描いた全6話のドラマ。

企業の粉飾と、それに対して厳格監査を貫こうと奮闘する会計士を描いている姿がとても格好良く、ドラマ自体もすごく面白くて、自分がUSCPAを受験して公認会計士になりたいと思ったきっかけの一つでもありました。

ただ、当然ドラマなので実際の監査業務とは違って大げさに描かれている部分がいくつかあることを監査法人に入ってから個人的に実感しました。

公認会計士に興味がある大学生や社会人、すでに会計士として監査法人で働く人などかなり夢を持てたり共感する部分が多いので是非とも一度観てみた方がいいです!

ドラマ「監査法人」の1話あらすじ

冒頭から黒塗りのハイヤーが数台、とある会社に向かっていく。

監査法人の会計士集団。

大企業のサプライズマートの期末監査をするために、ジャパン監査法人が往査にやってきた。

パートナーの小野寺が先頭に立ち、若杉(塚本高史)や山中(松下奈緒)ら会計士を十数名ほど引き連れて本社1階にやってきた。

サプライズマートも社長ら十数人の社員が緊張した面持ちでジャパン監査法人のメンバーを出迎える。

サプライズマート社長「ご苦労様です」

パートナーの小野寺「ジャパン監査法人です。早速ですが、期末会計監査に入らせていただきます」

沢山の過去調書などの資料が入っているスーツケースを転がしながら、会計士たちは会社が用意した大会議室に入っていき会計監査をスタートさせる。

そしてその監査結果で出た結論をパートナーの小野寺が監査報告会でサプライズマートの社長に伝える。

「前回、我々が指摘した事項が今回の会計監査で何ら改善が見られませんでした。よって、ジャパン監査法人はサプライズマートの決算書を・・・承認することができません!」

大きく経済界に影響を与える会計士の社会的意義と苦悩の物語がここから始まる・・。

会計士視点から観たドラマ「監査法人」の感想(ネタバレ含む)

さて、ここからはネタバレを含みつつドラマの感想をファンとして語っていきます。

まずこのドラマで監査対象となった主な企業はゼネコン、メガバンク、老舗和菓子屋、新興ドーナツチェーンです。

メガバンクの監査は特に、その時代の社会情勢を反映させるかのような内容で金融庁と監査法人の板挟みで苦しい銀行の様子が如実に表れていましたね~。

他の企業の監査も、利益を出さなくては融資がストップしてしまうというような切実な経営事情から粉飾をやらなくてはいけないという会社の苦しさを物語っており毅然と対応する若杉や山中の苦悩もすごくよくわかります!

もちろん、監査の専門的な事があまりよくわからなくても職業モノとして大いに楽しんで観れるドラマなので当時観ていた自分は「会計士ってこんなにカッコいいんだ!俺もなりたい!」となりました。

で、実際になりました(笑)

ただ、ドラマでは相当会計士のオイシイ部分が描かれていますけどね・・・パートナーとかが会社の経営陣とのんびりゴルフをしたり料亭で会食をしている様は夢がありつつも「これ今の時代はやってないだろ(笑)」と。

若手会計士の若杉らは厳格監査に徹していたので、そういう接待的なことは全く眼中になかったのがこれからの監査法人の在り方を物語っていたようですがね。

でも、厳格監査に徹していた若杉もやはり常に葛藤しながら企業に決算書の不承認を伝えていたんですよ。

若杉が親しくしていたドーナツチェーンの若手社長が実は粉飾で売り上げを計上していることを知った時、社長に懇願されて決算書を承認してしまった!

ベンチャー企業が上場するために、社長は必死だったのでそれで心が一瞬折れてしまったんですよね。

それが原因で後々トラブルに・・・。

登場した企業の粉飾の手口も、実際にありえなくもないものだったのでさすがはNHKだと感心。

・1話でゼネコンが未完成の建設物件の売り上げを前倒しで計上する
・2話で和菓子屋が火災被害で得た補償金を保険金として計上していない
・3話で銀行が繰延税金資産の償却を3年から5年に書き換えようとする
・4話でドーナツチェーンが存在しない架空の店舗の売り上げを計上していた

ドラマのテイストとして、基本的にはシリアスなのだが重さは全くない。

ちなみに、ドーナツチェーンの若手社長は阿部サダヲが演じているがこの社長はかなり明るい(まあ、のちに粉飾がばれて必死キャラになってしまいますが)。

何より、公認会計士をまともに描いていて会計士を目指す人が夢を持てる部分と厳しさを感じる部分がはっきりとわかる!

監査法人のリアルな当時の状況も考慮した上で放送された作品だというのがうかがえる。

ジャパン監査法人は中央青山監査法人をモデルにしているだろうし、途中で元ジャパン監査法人の小野寺が立ち上げたエスペランサ監査法人はPWCあらた監査法人だろうし・・もちろん完全忠実に再現はしていないですが。

まあでも、ところどころツッコミどころはありますよ。

①ドラマでは黒塗りのハイヤーで監査先の企業へ往査してる場面がある
⇒ありえません。通常は電車移動、たまにタクシーでの移動です。

②ドラマでは本社入口で社長一同大勢の社員が待ち構えて挨拶に来る場面がある。
⇒ありえません。普通は受付に連絡して担当者を呼んで監査室に案内してもらうくらいです。

③ドラマでは、塚本高史と松下奈緒が演じる会計士がクライアントに対して高圧的
⇒ありえません。監査といっても、クライアントから法人側は監査報酬をもらっているのでもっと接し方は柔らかいです。

④ドラマでは監査した決算書を承認できないと公表する場面がある。
⇒ありえません。承認できないとわかった時点で、会計処理を直してもらうか、最悪監査法人側から監査を降ります。

⑤決算書が承認できないことを社長一同に報告したとき、社長含めてその場にいる全員から「我社の決算書を承認してください!お願いします!」と土下座される場面がある。
⇒ありえません。④と同じ理由です。

まあ、ドラマと実際の現場では上記のようないくつかの違いはありますけど、基本的には日本では初めてしっかりと会計士の仕事ぶりを描いたドラマだと思っているので、すごく面白くて好きです。

銀行の仕事を描いたドラマ「半沢直樹」もそうですけど、盛り上げるためにドラマで実際の現場よりもデフォルメされるのは当たり前ですしそうすべきです。

それがフィクションのドラマですから。

監査法人の仕事ぶりや雰囲気などをそのまま忠実にドラマにしてしまったら、それこそ地味すぎて誰も観ませんしね(汗)

弁護士とか医者のドラマならいっぱいあるんですけどね~、会計士って地味ですからNHKもよく放送してくれたと褒めたいくらいです(笑)

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